犬・猫の健康辞典

必要な栄養素report

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栄養素とは食べ物に含まれる成分のうち、生命の維持や健康、成長、生活に必要な成分のこと。人も犬・猫も栄養素の種類は同じですが、質、量、バランスがそれぞれ異なります。また、栄養素には含まれませんが、生きていくためには「水」も必要不可欠です。猫は肉食ですが犬は雑食です。最適な食事とは必要とする栄養素をバランスよく含んだものを毎日規則正しい時間に与えることです。そこで一体どんな栄養素が必要か?不足や摂りすぎはどうなるか?と言うことを紹介します。

5代栄養素と3代栄養素

大きく分けて、エネルギー源となる「炭水化物」、「脂質(脂肪)」、「タンパク質」と、
体の調子を整える非エネルギー源「ビタミン」、「ミネラル」があり、これを「5大栄養素」と言います。どの栄養素も健康で元気に生きていくためには欠かせません。

三大栄養素 【炭水化物、タンパク質、脂質】
体の中でエネルギーを作り出す三大栄養素を言います。
エネルギーの全ては食事によって摂取したたんぱく質、脂肪、炭水化物から作り出されます。
肉食動物の猫では、人や犬よりもさらに多くのタンパク質と脂肪を必要とします。
猫の体内で合成されず、食べ物からとらなければならない必須アミノ酸は11種類あり、
特にタウリンが重要です。タウリンが不足すると目の障害や心臓疾患を引き起こすこともあるので、タウリンを含む動物性タンパク質をしっかりとる必要があります。また、人や犬は緑黄色野菜に含まれるβ-カロチンをビタミンAに変換しますが、猫にはこの機能がないため、ビタミンAを含む動物性食品から直接とらなければなりません。

犬にとって特に重要な栄養素はタンパク質で、人の4倍以上を必要とします。
しかし、ただとればよいというわけではなく、タンパク質を構成するアミノ酸の種類と
バランスが重要です。犬の体内で合成されず、食べ物からとらなければならない必須アミノ酸は10種類あり(成人は8種類、幼児期は9種類)、これらをバランスよく含んでいる動物性
タンパク質が犬の食事には適しています。
ビタミンCは、人は体内で合成できないので外部からとる必要がありますが、
犬は体内で合成できるので必要はありません。
カルシウムやリンなどのミネラルは成長期の犬の骨格づくりには欠かせません。


炭水化物

繊維質と糖質を合わせた栄養素で、体を維持するために必要な5大栄養素の1つです。
炭水化物は、殻類(人はパンやご飯)に多く含まれ、食事から摂取する炭水化物は体に負担を
かけずにエネルギーを作り出す事ができます。肉食の猫は炭水化物の消化や吸収力が高くない為
特に主要な栄養素ではありません。雑食の犬は炭水化物を多く含んだ穀類や野菜を消化する事が
出来ます。しかし、動物性食品だけでは、ビタミンやミネラルなどが偏り、栄養バランスが
崩れてしい、腸の機能にも負担がかかるため、適量の炭水化物は栄養素として有効です。

糖質は、炭水化物の主要な構成成分の1つです。単糖類(ブドウ糖、果糖等)、
二糖類(ショ糖、乳糖、麦芽糖等)、多糖類(でんぷん、グリコーゲン等)の3種類に分けられ
ます。二糖類や多糖類は唾液や小腸内の消化酵素によって、分子が最も小さい単糖類に分解
されてから体内に吸収されます。多く摂取しすぎると体内で脂肪に変わり体に蓄積され肥満の
原因になります。また不足するとエネルギーに供給されるばかりで体を作る為に使うことが
出来ません。犬や猫の主要なエネルギー源は、タンパク質と脂肪で、糖質を中心に
エネルギーを得ようとすれば、栄養が偏り、内臓に負担がかかります。

食物繊維は炭水化物の構成成分の1つです。野菜や穀類・豆類などに含まれる
「不溶性食物繊維」と、海藻や果物などに含まれる「水溶性食物繊維」の2つに分けられます。
食物繊維は体内の消化酵素では消化されず、そのまま大腸に送られます。不溶性食物繊維は
大腸を刺激して便通を整え、便秘を防ぐ整腸効果があります。また、水溶性食物繊維は
腸内の善玉菌を活性化し、コレステロールなどが吸収されることを防ぎます。
犬や猫にとっても、適量の食物繊維は便秘や下痢の予防効果があります。高齢になると、
胃腸の機能も低下するため、食物繊維を与えることで、胃腸の調子を整えることができます。
また猫では、舐めて体内に入った抜け毛の排泄をスムーズにし、毛球症を防ぐ効果も期待
できます。又りんごの主成分は、食物繊維のひとつ・ペクチンです。ペクチンには、
腸内の善玉菌のエサとなって腸内環境を整え、余分なコレステロールの吸収を防ぐ性質が
あるため、便秘や肥満の予防に効果的です。さらに、腸内の発ガン性物質を吸着して、
便とともに体外へ排出する働きがあり、ガンの発生を抑える効果も期待できると言われます。


たんぱく質

たんぱく質は体を構成する細胞組織になくてはならない5大栄養素の一つです。
体内でのたんぱく質の主な役割は生命を維持すると同時に新しい細胞を作り(筋肉、内臓、
皮膚、血液、ホルモン等体の器官や組織)、また脂肪や炭水化物が不足してエネルギー源が
満たない場合は、糖質に変えられて有効に利用されます。
犬は人の約4倍、猫は人の約5〜6倍のタンパク質を必要としますが、長期間過剰に摂取していると、
腎臓の働きに悪影響を及ぼすことがあります。タンパク質は約20種類のアミノ酸からなり
食物から体内に摂り込まれたタンパク質は、アミノ酸に分解されて吸収されます。そして、
別のアミノ酸に変換されたり、再び結びついたりして、新たなタンパク質が作られます。
アミノ酸には体内で合成することができる非必須アミノ酸と、体内で合成できずに食事など
から直接摂らなければならない必須アミノ酸があります。
猫には肉や魚・乳製品等の動物性食物に含まれるアミノ酸が欠かせません。特にタウリンと
言うアミノ酸は植物に含まれていないので動物性たんぱく質が少ないと欠乏症を起こします。

タンパク質の過剰摂取と不足

<過剰摂取>過剰に摂りすぎたタンパク質は、脂肪に換えられて体内に蓄積されるので、
肥満の原因になるほか、腎臓にも負担がかかります。

<不足>成長障害や貧血、食欲減退、毛づやがなくなるなどの症状が起こります。


脂質(脂肪)

脂肪は、タンパク質や炭水化物など他の栄養素に比べて2倍以上のカロリーをもち、
最も多くのカロリーを生み出すエネルギー源です。体内での脂肪の主な役割は
ビタミンA、D、E、Kの脂溶性ビタミンの吸収を助けます。内臓の保護、体温の維持、
脳神経の働きの活性化等や、食事の口当たりをよくして嗜好性を高める働きもあります。
犬に比べて猫は多量の脂肪を必要とします。しかし過剰な脂肪を与えていると肥満の原因に
なります。脂肪が不足すると繁殖力の低下や体重、体力の低下、皮膚に負った傷が治り難い、
抵抗力や免疫の低下が起こります。これは品質の悪いドッグフードや酸化したものを
与えられた事が原因と言われます。

脂肪は脂肪酸から構成されます。脂肪酸は、動物性脂肪に多く含まれ、常温で固体になる
飽和脂肪酸と、植物や青魚の中に多く含まれ、常温でも液体のまま固まらない不飽和脂肪酸
があります。不飽和脂肪酸は、善玉の脂肪酸とも言われ、コレステロールのバランスを保ち、
免疫機能、生殖能力、皮膚や被毛の健康等に大きく作用しています。

適量の不飽和脂肪酸は健康維持のためにとても有効ですが、酸化・変性しやすいという欠点が
あります。アジ、サバ、カツオなどの青魚に多く含まれるので、これらの魚ばかりたべている
猫では、腹部などの皮下脂肪が酸化、変性して炎症を起こし、「黄色脂肪症(イエローファット)」という病気になることもあります。これは、栄養のかたよりが原因です。酸化を防ぐ働きの
あるビタミンEを併せて摂ることが予防になります。体内で合成できずに食物などから摂る
必要がある脂肪酸を、「必須脂肪酸」といいます。犬の必須脂肪酸はリノール酸です。
リノール酸はすべての動物が必要とする脂肪酸で、植物油や動物性脂肪の中に多く含まれます。
また、猫の必須脂肪酸には、リノール酸のほかにアラキドン酸があります。
人や犬は体内でリノール酸からアラキドン酸を合成することができますが、
猫は合成することができないため、食べ物から摂る必要があります。
アラキドン酸は動物性脂肪の中にしか含まれていません。

DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)
不飽和脂肪酸のひとつで、ともに「オメガ3脂肪酸」に分類されます。
オメガ3脂肪酸は、血液の凝固を防いでサラサラにしたり、中性脂肪やアレルギーの
引き金となるロイコトリエンを減少させ、心臓病や動脈硬化を予防するといわれています。
DHAとEPAにはいずれも、犬や猫の皮膚のトラブルを予防し、被毛の美しさを保つ効果が
あります。一方で、酸化しやすいという欠点もあるため、ビタミンCやE、βカロチンと
一緒に摂ることが望まれます。また、DHAには脳機能を維持して記憶力を高める力が、
EPAには血液をサラサラにする力があるといわれています。

脂肪の過剰摂取と不足

<過剰摂取>摂りすぎれば肥満の原因になり、肥満が元でさまざまな病気を引き起こす
こともあります。

<不足>発育不良になったり、皮膚や被毛のつやが悪くなったり、免疫力が低下したります。

脂肪はグリセリンという物質に3つの脂肪酸が結びついてできた、トリグリセリドによって
構成されています。食物から体内に取り入れられた脂肪は、消化酵素によってグリセリンと
脂肪酸に分けられて、利用されます。 


その他 ビタミンA

体を維持するために必要な5大栄養素の一つ。炭水化物、タンパク質、脂肪が、体内で血や肉に
なったり、エネルギーになったりするときに、その働きをスムーズにする「潤滑油」のような
役割します。「脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)」と「水溶性ビタミン(ビタミンB郡、
C、パントテン酸、ビオチンなど)」の2つのタイプに大別され、さらにさまざまな種類が
あります。必要量は微量ですが健康な生活を送るために欠かすことのできない重要な栄養素で、
各種ビタミンをバランスよく体内に摂り入れることが大切です。

ビタミンA
目を保護する働きがあります。視覚低下の予防、皮膚や粘膜の健康維、歯と骨の成長・免疫力を
高める働き等があり欠かせない栄養素です。ビタミンAは牛肉や卵黄、レバー等に含まれています。
初めからビタミンAの形になっている「レチノール」と、緑黄色野菜などの中に含まれる
「β-カロチン」のように、体内でビタミンAに変わるものとの2種類があります。
人や犬はβ-カロチンをビタミンAに変える機能をもっていますが、猫にはこの機能はないので、
動物性食材から直接摂取する必要があります。

<犬>のビタミンAの欠乏症、過剰症
欠乏症
網膜変性・角膜障害・毛づやがなくなる・体重減少・食欲減退・繁殖障害など
過剰症
骨の脆弱化・知覚過敏・食欲減退・体重減少など

<猫>のビタミンAの欠乏症、過剰症
欠乏症
網膜変性・角膜障害・結膜炎・毛づやがなくなる・体重減少・食欲減退・筋萎縮・繁殖障害・運動失調など
過剰症
骨の変形・脊椎の変形・食欲減退・体重減少など


ビタミンD

骨の形成に最も必要で成長期には重要な栄養素です。不足するとクル病・骨軟化症をおこします。与えすぎると食欲不振・下痢などが起きます。人は日光を浴びて体内でビタミンDを作れますが犬は、紫外線からビタミンDを合成する機能が高くないので、食事から摂取が必要です。

<犬>のビタミンDの欠乏症、過剰症
欠乏症

クル病・骨や歯の異常・筋肉の弱体・関節炎など
過剰症
高カルシウム血症・組織へのカルシウム沈着・下痢・脱水・食欲減退・体重減少など

<猫>のビタミンDの欠乏症、過剰症
欠乏症

クル病・骨や歯の異常・筋肉の弱体・関節炎など
過剰症
高カルシウム血症・組織へのカルシウム沈着・下痢・脱水・食欲減退・体重減少など


ビタミンE


骨格や筋肉の成長を助け、体内の血行を良くし老化防止にも良いと言われています。魚に多い不飽和脂肪酸は酸化しやすく、また過剰摂取すると活性酵素と結びつき過酸化脂質となり細胞膜を傷つけ、癌や動脈硬化・老化の原因になります。これを防ぐのがビタミンEとなるので酸化防止にも多く必要です。また猫は不飽和脂肪酸を摂りすぎると、黄色脂肪症(イエローファット)という脂肪が変性し炎症が起こる病気になりますが、ビタミンEを同時に摂取する事で予防できるといわれます。

<犬>のビタミンEの欠乏症、過剰症
欠乏症

繁殖障害・栄養性筋ジストロフィー・黄色脂肪症など
過剰症
食欲減退など

<猫>のビタミンEの欠乏症、過剰症
欠乏症

黄色脂肪症・繁殖障害・栄養性筋ジストロフィーなど
過剰症
食欲減退など


ビタミンK

血液を固まりやすくする、大量出血を抑える等の血液凝固作用があります。犬や猫が健康な時は腸内細菌によってビタミンKを合成することができるので、不足する事があまり無いといわれます。


ビタミンB1

チアミン(サイアミン)とも呼ばれます。炭水化物の代謝やエネルギーの生産、消費に関与するほか、精神状態の改善や神経系、筋肉、心臓の機能を正常に保つ働きなどもあります。犬や猫でもビタミンB1が不足すると、食欲不振や嘔吐、ふらつきなどの神経症状を起こしたり、ひどくなると昏睡状態に陥り、死亡することもあります。とくに猫では、人や犬よりも多くのB1を必要としています。もともと猫は肉食なので、炭水化物 の多い食事ではB1の消費が高まって、多くの量が必要になります。また、生魚や貝類にはビタミンB1を分解する酵素が含まれているため、生でたくさん食べると体内のB1が破壊され、欠乏症を起こします。

<犬>のビタミンEの欠乏症、過剰症
欠乏症

食欲減退・体重減少・嘔吐・疲労・脱水・衰弱など

<猫>のビタミンEの欠乏症、過剰症
欠乏症

食欲減退・体重減少・嘔吐・ふらつき(歩行失調)・心機失調・けいれん・麻痺など


ビタミンB2

ビタミンB2は、炭水化物、タンパク質、脂肪を分解して利用するフラビンという酵素の働きを助けるため、リボフラビンとも呼ばれます。とくに脂肪の燃焼に深い関わりをもつため、B2が不足すると脂肪の代謝に支障を来します。また、「発育のビタミン」とも言われ、成長や発育には不可欠です。皮膚や口腔内の粘膜の発育を助け、保護する役割もあります。人では、ビタミンB2の不足で、ニキビや肌あれ、口内炎などの症状が見られます。犬や猫でも、不足すると頭部や耳周辺の脱毛や、皮膚炎、口内炎などの口腔の病気にかかりやすくなります。

<犬>のビタミンEの欠乏症、過剰症
欠乏症

脱毛・皮膚炎・食欲減退・体重減少・繁殖障害・口内炎など

<猫>のビタミンEの欠乏症、過剰症
欠乏症

脱毛・食欲減退・体重減少・口内炎・白内障・睾丸萎縮(オス)など


ビタミンB6

ピリドキシンとも呼ばれます。タンパク質の代謝に深い関わりをもち、アミノ酸を合成したり、分解を促進する酵素の手助けをします。発育期に不足すると、成長が妨げられることがあるため、発育期や妊娠期にはとくに重要です。また、赤血球を作り出して貧血を予防するほか、免疫機能を正常に保つため抗アレルギー作用もあり、じんましんや湿疹など皮膚炎の予防にも効果的です。

<犬>のビタミンEの欠乏症、過剰症
欠乏症

貧血・疲労・神経機能不全・成長障害・神経過敏など

<猫>のビタミンEの欠乏症、過剰症
欠乏症

体重減少・成長障害・貧血・腎臓病・けいれんなど


ビタミンC

ビタミンC は、細胞と細胞をつなぎあわせるコラーゲンの合成や、骨の形成に重要な役割を果たします。人では、美容、美白効果や、風邪やがん、生活習慣病の予防効果が期待されています。霊長類やモルモット、一部の鳥類を除いて、犬や猫を含むほとんどの動物は体内でビタミンCを合成することができるため、とくに食事などで補う必要はなく、ビタミンCの欠乏もほとんど起こりません。人は体内でビタミンCを作ることができないため、食事や健康食品から摂取する必要があるのです。


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